TOPへ
j-stage 入会のご案内 各種手続き

ニュースレター 第5号

巻頭言

幹事長 矢島忠明

この2月には今世紀最後の冬季五輪が長野で予想以上に盛り上がり、 多くの国民に熱い感動を与え成功のうちに終わりました。 サッカーでは悲願であったフランスワールドカップ(W杯)への初出場を果たしたことで、マスメディアは連日サッカー報道一色であり、 また多くのサポーターはフランスまで出掛けて一喜一憂しながらも熱烈な声援を送るなど、 オリンピック以上の盛り上がりを見せました。これは、関東地方における日本戦の平均視聴率が60.5%を超えたことからも十分窺い知ることができます。 (スポーツ中継の視聴率歴代第1位は東京五輪の女子バレー「日本対ソ連1964年10月66.8%」) この高視聴率の背景には、サッカーW杯を公共放送であるNHKが独占放送したこと、 さらに衛星放送やハイビジョンなどの普及によるところが大きいと思われます。 以上のようにスポーツ関連のイベントは、 マスメディアを通じた<見るスポーツ>として大勢の人々に夢と感動を与えているのが現状です。 そしてこのことは、21世紀の国民とスポーツとの関係に大きな変化をもたらすものと思われます。

近年、中高校生のバレーボール離れが著しく進んでいることが現場の指導者から懸念されています。 この11月に日本でバレーボール世界選手権大会が初めて男女同時に開催されますが、 テレビ中継などを通じてこの大会から新たなバレーボールの魅力が見出されることは間違いないでしょう。 その結果、競技人口の裾野が広がり、さらに多くの人々が実際に会場へ足を運ぶことでバレーボールファンがますます増え、 そして旺盛期の”バレーボールの嵐”が再び吹くことを期待するものであります。

さて、バレーボール研究会も多くの会員の皆様のご協力により、 発足して早4年目にはいりました。 ますます本研究会の充実・発展に貢献できるよう努力してゆきたいと思います。 そこで今年度の総会で、本研究会の機関誌としてバレーボール研究誌を発刊することが決定しました。 機関誌を発刊することは本研究会の重要な使命の一つであるとともに、 大きな相乗効果を期待することが出来るものと確信しております。 どうぞお気軽に、バレーボールに関する研究結果や現場に役立つ実践的な指導法・練習法、 さらに日頃から興味・関心を抱いている様々なことをまとめてご投稿下さい。 その成果を再び現場にフィードバックすることにより、 教育や社会現場との情報交換の結節点としての役割をバレーボール研究会が果たすことを大いに期待しております。 なお、今回は記念すべき創刊号ですので、多くの会員の皆様方が奮ってご投稿下さることを心よりお待ち申し上げております。

1998年度第1回研究集会報告

平成10年6月13日(土)に1998年度第1回バレーボール研究集会が、 順天堂大学医学部5号館会議室において開催された。 今回のテーマは「バレーボールのチーム作り男子編その1」で、 35名の参加者を集めて熱心に話し合われた。 この度の研究集会の目的は、バレーボールの競技力向上を図るため、 各レベルでバレーボールに関与し、活躍されている方々よりご提言をいただき、 参加者全員でディスカッションを行った。

ご提言をいただいた方は、吉田清司氏(専修大学)、 蔦宗浩二氏(順天堂大学大学院、元釜利谷高校監督)、 寺村重保氏(品川区立大崎中学校)の3氏である。 吉田氏はシドニーオリンピックを控えるオーストラリアの選手強化システムについて、 蔦宗氏は釜利谷高校を率いて全国優勝するまでにおこなってきたことについて、 そして寺村氏は中学校のバレー界においてトップチームを作る過程を、 経験談を踏まえながらご提言された。 これらのご提言を受け、参加者から各先生方に、勝つためには具体的に何を行なうかといった、 チーム作り、トレーニング、技術をはじめ鋭い質問がなされ、活発にディスカッションが行われた。 以下、ご提言いただいた3名の先生方の発表要旨を掲載する。

(編集委員 高橋宏文)

「オーストラリアのバレーボール」 〜選手強化の国家システムAIS〜

吉田清司 氏

筆者は97年4月から1年間、 オーストラリアの首都キャンベラにあるAustralian Institute of Sport(AIS)バイオメカニクス研究室に招聘された。 また、バレーボールナショナルチームを中心にAISでトレーニングする各種目のコーチング現場に接することもできた。 そこで今回はオーストラリアのバレーボールと題し、選手強化の国家システムであるAISについて報告する。

オーストラリアのバレーボールは、日本のような学校・企業単位での強化が盛んではない。 しかし、シドニー五輪を控えた男子チームは、昨年のアジア選手権で韓国を破るなど、 国際競技会での活躍が目立ってきている。 その要因の一つに、ナショナルトレーニングセンターの機能を果たすAISの存在があげられる。 バレーボールチームは、AISを本拠地として日夜トレーニングに励んでいる。 彼らは世界最先端の競技・トレーニング施設を利用し、専任コーチ・トレーナーの指導を受けるだけでなく、 スポーツ医科学の専門家のサポートの下で競技力向上を図っている。

また、選手は生活研修プログラムとして、講演会などでのスピーチの仕方、 記者会見での対応技術、面接訓練、就職カウンセリング、レポート作成法、 タイム・マネジメント、コンピュータ・スキル、スポーツ情報センターの活用法などの講義を受け、 バランスのとれたスポーツ選手を目指す。 この国のスポーツ強化システムの特徴は、 旧東欧国に代表された国威発揚のためのシステムではなく、 資本主義社会の中で個人主義を尊重しているシステムだという点にある。 AISは学校ではないが、選手には個々の学業成績や志望コースに応じて、 地元の小学校から大学までを紹介、推薦される。 そのため、オーストラリアのトップバレーボール選手が自分の学校でトレーニングすることは稀である。 指導理念という観点からもオーストラリアはスポーツコーチ養成・公認制度が非常に整備されており、 AISを頂点とするピラミッドの概念を徹底させ、 系統だった一貫指導が可能となるようコーチ養成にも力を注いでいる。

日本の指導環境を振り返ってみると、 中学、高校、大学、企業と指導者の立場、経験、技能、理念もさまざまで、 長期にわたる選手育成のイメージを統一することは容易ではない。 選手はそれぞれの段階で独立して完結されるため、 素質や将来性が適切に考慮されないで伸び悩んでしまう場合もある。 低年齢層では、勝つことを重視したための精神的な燃え尽きや、肉体の使い過ぎの弊害も問題視されている。 日本バレーボール界の国際競技力が、長期的に低下している現状では、 これまでの学校や企業に頼ってきた日本の選手強化システムは限界にきているように感じる。 社会制度や文化の違いがあろうが、 日本もAISのような、長期的な視野に立った一貫指導システムの導入を検討すべき段階にきていると思われる。

「日本一への挑戦」

蔦宗浩二 氏

今回の研究集会では、釜利谷高校を指導されて7年目に 全国大会の三冠を達成された先生の 指導理念や経験談を下記の19項目にまとめて発表していただいた。

  1. 0からのスタート
  2. 初めてのミーティング
  3. 釜利谷高校バレーボール部の歴史
  4. 恩師の言葉
  5. 固定観念を持たない
  6. 新しい戦術を創る
  7. 勝つことより人間性の育成を大切に
  8. 父母会
  9. 120パーセントの原理
  10. 好循環と悪循環
  11. 集中力の向上
  12. 思考能力と努力の方向性
  13. 運の研究
  14. 認める原理
  15. 練習の質と量
  16. 麻雀と将棋とバレー
  17. 潜在意識のトレーニング
  18. セッターの育成法
  19. 母と子のバレーボール教室

ここでは、5)固定観念を持たない の文章を掲載する。

「腰を低くしろ」「腰が高いぞ」 私がバレーボールを始めてからよく聞いた言葉です。 私自身大学3年まで、何の疑問も感じずに実行してきました。 しかし、ある練習の時に「腰を低くしてレシーブする必要はないぞ」と気が付いたのでした。

レシーブで必要な要素は、動体視力、目線のぶれがないこと、 目線がカウンター(前にでない)にならないこと、 レシーブ面が回転しないこと、上が見やすい姿勢、素早くレシーブ面をスパイカーに正対すること、 ボールのエネルギーを吸収する肩や肘の使い方などいろいろあると思いますが、 「腰を低くする」必要性はなにもありません。  では、なぜそのようなことをしきりに言う人がいたのか。 これは、マンツーマンレシーブなどを多くやっているうちに出来てきた技術ではないでしょうか。 つまり、スパイク角度が低い技術体系です。 これに気が付くまで約十年の歳月を有しましたが、 気が付いてからすべてのバレーボール技術の見直しを自分なりに実行することができました。  すると、いままで疑問すら持たずに信じていた事柄の中で、 いかに認識レベルが低かったものが多いことに気付きました。 これは、バレーボールの技術・戦術以外にも体力のとらえ方、 トレーニング方法やトレーニングの概念、コンディショニングの方法、 バレーボールに適した食事、血液の大切さ、心理面などありとあらゆる事項にあてはまりました。そして、いろいろ研究・実験した結果が全国大会優勝に何回も結びついたと思います。

(文責 柏森 康雄)

「中学校トップレベルのチームづくり」

寺村重保 氏

全国大会制覇に至るまで(昭和56年全国大会)

勉強学校であったため、赴任したときはクラブ活動は週2日以内であった。 次年度から週7日にして品川区の上位に食い込んでいった。 一年間土日なし、一日2〜3時間、全部ついて指導していた。夏休みは休み3日くらい、朝練毎日7:00〜8:15まで行なった。 (私がスキー愛好者であるため、冬休みの活動は3日くらいでした。)

環 境

地区に強いチームがいた。全国大会経験監督が区内に2名いた。地域、親の理解を十分得るための努力が必要。越境が多く勉強学校のためクラブ週2日→週7日。

親の協力、理解

体罰当たり前(親の前で何10発もぶん殴った。) また、食事の手伝い、試合の時の昼食の用意なども協力してもらった。毎週自校で練習試合、滋賀県、静岡県遠征、 全国大会-松山、関東大会-栃木、千葉などの遠征滞在費の捻出(バザーの開催等)

強いチームのバレーを真似る

自分なりにアレンジする。
自チームの独自のチームカラーをつくりだす。

  • 攻撃的
  • オープンバレー
  • ブロックを強化
  • 高さをえるための体力強化

など

昨今のクラブ活動の状況と強いチームをめざしてのチーム作り

  • 子どもの数が多かった→少なくなった
  • 貧しかった→豊かになった
  • 物資がない→娯楽が増えた
  • 毎日外で遊んでいた→外で遊ばない
  • 学校に任せていた→少子化による過保護
クラブにおいては(生徒)

以前

  • 全員がやっていた(中学に来て何に入るか楽しみにしていた)
  • 夏休みなどは毎日のように(30日くらい)やっていた。
  • 毎日部活をやるのが当たり前であった。

現在

  • 大好きで一生懸命やる子はごく一部になった。
  • 大部分は、日数が少ない・厳しくない・楽ちん・土日はやらない・夏休みは休みが多いなどがクラブを選ぶ基準となっている。
クラブにおける教員の意識

以前

  • 全教員がなんらかの形で指導していた。
  • 週五、六日活動、休みは水、日くらい(特に生活指導はクラブに負うところが多いという考えがあった)

現在

  • 好きな人(物好き)がやっている。
  • 一般的には週三日程度(土日はなし)

1997年度収支決算報告

収入の部

項目金額摘要
予算額決算額
繰越金311,171311,1711996年度より繰り越し
会費570,000558,000@3,000円×186名
大会参加費300,000192,000@3,000円×64名
雑収入022,593雑収入、元加利子、次年・次次年度会費
合計1,181,1711,083,764 

支出の部

項目金額摘要
予算額決算額
会議費150,0008,710幹事会
事務費50,00012,463事務用品
通信費100,00096,040郵送費
大会費450,000420,727第1回研究集会: 98,282円
第2回研究集会: 84,899円
第3回研究大会:237,545円
印刷費250,000112,205ニュースレター等
調査研究費100,0000 
予備費81,1710 
合計1,181,171650,145 

差し引き残額:1,083,764円-650,145円=433,619円
(1998年度に繰り越し)

以上御報告申し上げます。

1998年6月13日
バレーボール研究会
総務委員会
委員長 遠藤俊郎 印略

監査の結果、以上の報告に相違ないことを御報告いたします。

1998年6月13日
1996・1997年度監事 原田智 印略
河合学 印略

1998年度収支予算

1998.6.13

収入の部

項目金額摘要
繰越金433,6191997年度より繰り越し
会費450,000@3,000円×150名(概数)
大会参加費300,000@3,000円×100名(参加者概数)
雑費0 
合計1,183,619 

支出の部

項目金額摘要
会議費100,000諸会議
事務費30,000文具等
通信費100,000郵送費等
大会費450,000研究大会、研究集会等の開催経費
印刷費100,000ニュースレター1回、資料等の印刷
機関誌発行350,000「バレーボール研究」発行
調査研究費50,000 
予備費3,619 
合計1,183,619 

最近の出版情報

このコーナーでは、会員相互の情報交換、 及び、バレーボールに関する最新情報の発信という本会の趣旨から、 最近会員の方々が関わった書籍等の出版物の紹介をいたします。

タイトル出版社著者・監修・編集等関係する会員名
スポーツ集団のマネジメントぎょうせい永田靖章 編著後藤浩史 分担執筆
ビーチバレー教本日本文化出版日本ビーチバレー連盟泉川喬一 分担執筆
山下俊紀 分担執筆
石川利正 編集スタッフ
バレーボールコーチングの科学ベースボール・マガジン社カール・マクガウン 編著杤堀申二 監修
遠藤俊郎 編訳
河合 学 訳
篠村 朋樹 訳

編集後記(事務局便りを含めて)

これまで年2回だったニュースレターの発行が今年から年1回になり、 もう1回分の内容は機関誌「バレーボール研究」に含めていくことになりました。 そのため多少発行が例年より遅くなってしまいました。 しかし、今回のニュースレターは、第1回研究集会報告、第1回幹事会(6/13)で承認された1997年度会計報告、 およびそれに基づく1998年度収支予算書、等の報告事項に加え、 明石企画委員長を中心に鋭意検討し装いを新たにした第4回総会・研究大会開催要項、抄録執筆要項、 また、菅野・小川両企画委員を中心に企画中の初めて東北の地で開催する第2回研究集会案内、 さらに、編集委員会が進めている機関誌発行に伴う表紙デザインの募集、等の告知事項を掲載し盛りだくさんになりました。 多くの重要な内容を含みますので是非お見のがしの無いようにお読み下さい。 

加えて、新設した最近の出版情報欄、今回は3件でしたが、 今後とも会員の情報をお待ちしておりますのでどしどしお寄せ下さい。 上記のような諸事業の他、現在第50回日本体育学会(1999年10月東京大学)におけるシンポジューム共催に向けての準備も矢島幹事長を窓口に進められております。 

最後に、お願いをいくつか!!!

  • 第4回研究大会では今回一般発表形式で行います。また、機関誌創刊号の原稿締切は12月末日です。 どちらも本年度から初めて行われる事業ですが、 何とか多くの会員の方々の発表申し込み、投稿、 さらには表紙デザインの応募により充実したものになることを期待しております。
  • 1998年度収支予算書にもありますように 本研究会は会費だけが主な収入源となっております。 本年度の会費が未納の方は早急な納入をお願いいたします。

(1998.9.10.Toshi)