日本バレーボール学会 2014年バレーボールミーティング報告
会期 | 2014年8月17日(日) |
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会場 | 大東文化大学 東松山キャンパス 3号館0201教室 |
テーマ | 「一貫指導から求めるジュニア〜ユース世代の育成」 |
日本バレーボール学会 2014年バレーボールミーティング報告会期2014年8月17日(日)会場大東文化大学 東松山キャンパス 3号館0201教室テーマ「一貫指導から求めるジュニア〜ユース世代の育成」 2014年8月17日(日)、大東文化大学 東松山キャンパスにおいて、一貫指導から次世代の育成をテーマに、基調講演、シンポジウムが開催された。 また、今回も昨年に引き続き、埼玉県バレーボールスポーツ指導者協議会(義務研修会)と共催となったため、133名の参加者が集まり、テーマを通じてバレーボール選手育成における一貫指導の構築に関わる共通認識を考えるきっかけになったと思われます。
セッションレポート
13:40〜15:40 第1部:基調講演
「JVAにおけるゴールドプラン 〜これからの普及と一貫指導について〜 」
司 会:田中 博史(大東文化大学)、湯澤 芳貴(日本女子体育大学)
演 者:亀ヶ谷 純一(JVA国内事業本部指導普及委員会委員長)
緒方 良 (JVA国内事業本部指導普及委員会副委員長)
基調講演では、日本バレーボール協会の「ゴールドプランの推進強化」と「一貫指導の体制構築」の考え方や具体的な施策、将来性などに関する現状や課題、今後の計画について話題提供していただきました。
亀ヶ谷 純一 氏は、日本バレーボール協会における指導普及委員会の役割、ゴールドプラン(競技人口拡大プロジェクト)への取り組み、一貫指導システムについて解説されました。
ゴールドプランは、「将来の全日本候補選手」となるべき世代である小学生・中学生を対象とした若年層拡大プロジェクトであり、指導者講習会・研修会、バレーボール教室、ソフトバレー授業支援、幼稚園・保育園支援事業を全国加盟団体・指導普及委員会と連携して推進していることを説明された。現状では、少子化、スポーツニーズの多様化、指導者不足を理由に小学生女子競技者の減少が顕著であり、また中学生男子競技者は増えているが、団体が減少しており受け皿の問題が顕著であるとも述べられた。
一貫指導システムは、発掘、選抜・育成、強化の3段階から構成されており、発育発達段階に併せたカリキュラムに沿って実施されていると説明された。選手発掘の観点では、特に長身であることが選考基準として重要視される。その後、都道府県大会、長身者発掘合宿、全国大会などを経てナショナルチーム(シニア、ユニバ、ジュニア、ユース)を選抜するために東西対抗戦や優秀選手合宿などが実施され、代表選手の育成、強化へ繋げているといった事業概略を紹介され、最後に「バレーボールの面白さをいかに伝えていくか」という原点に戻る必要性を述べられた。
緒方 良 氏は、指導普及委員会の取り組みのひとつである基本技術統一化について解説されました。バレーボールにおける基本技術は初心者から上級者まで同じであるという考えから、どの指導ステージ(小学生、中学生、高校、大学など)であっても基本となる技術の指導は同じものでなければならないことや、スポーツに関わる人たちは、スポーツを成立させる「心・技・体」を十分理解し、幼児から老人まで如何に「楽しむ」ことが出来るかを考える必要性を述べられた。
そこで、指導普及委員会では「技」にスポットをあて、バレーボールを楽しむためのひとつとして、自分のイメージしたとおりに「体・ボールをコントロールできる」ことを取り上げ、全ての世代に適合する共通部分を摘出し基本技術の統一化を図り、指導要点の整理に務めていることが述べられた。
15:50〜17:25 第2部:シンポジウム
「一貫指導から求めるジュニア 〜 ユース世代の育成」
司 会:田中 博史(大東文化大学)、湯澤 芳貴(日本女子体育大学)
演 者:飯塚 初義(習志野市立習志野高等学校 男子バレーボール部監督)
赤木 貴雅(つくばユナイテッドSun GAIA マネージャー)
第2部のシンポジウムでは、飯塚氏、赤木氏に、実際のユース、ジュニア世代の指導に関わって実際の指導現場の現状と今後の課題などについて言及していただきました。
飯塚 初義 氏は、4つのテーマを題材として、ユース世代の指導では下記の内容が重要であることを自身の指導経験などを交えて紹介されました。
①人間性の育成
普段の生活習慣がその選手のプレーに明確に現れることを痛感したことから、人間性の育成(マナー、振る舞い、表情、目標へのひた向きさなど)に重点をおいた指導を追及。
②技術面のこだわり
ファーストコンタクト(レセプションとディグ)の精度およびブロック技術。
③経験(キャリア)を積ませる環境
ユース世代における大きな大会に出場し、できれば優勝経験を積ませる。また海外のチームと交流試合、国際試合を肌で感じられる環境を作る。
④魅力あるチーム作り
1)コーチングスタッフの充実
2)スカウトの大切さ
3)進路指導
4)応援の力
チーム作りに関しては、選手の人間性・技術的育成のみならず、上記のキーワードに対しても指導の要素として力を注ぐことが必要である。
赤木 貴雅 氏は、つくばユナイテッド Sun GAIA(つくば市内の体育館を拠点とし、幼稚園児〜中学生約130名の登録生をもつバレーボールクラブ)での活動事例と今後の施策について紹介されました。
①バレーボールの普及
スポーツがもたらす教育効果およびバレーボールの特性に関する理解から「バレーボールは仲間との高いコミュニケーション能力を身に付けるには最適なスポーツである」という推進活動の拡大
②導入期の重要指導内容
1)どんな集団にも適応できるコミュニケーション能力
集団行動のマナーを理解し、チームメイトと良い練習環境を築く力、礼儀、我慢など
2)多様な戦術に対応できる基礎技術と基礎能力
技術力と調整力の定着、技術・調整力を安定して発揮するための基礎体力
3)バレーボールで使用する専門的な知識
専門用語の学習と実践
③中学校バレーボールの現状とニーズ
部活動:目標となる大会が多いが、指導者・練習量が不足
クラブ:専門的な指導者、安定した練習時間はあるが、大会が少なく費用が掛かる
④クラブとしてのメリットとデメリット
学校外(部活動)で練習することやVリーグ選手が指導することについてのメリット・デメリットについて言及され、最後にTEAM Sun GAIAの今後の課題について述べられた。
以上のような内容から、ジュニア、ユースそれぞれの年代における現状や問題点を認識することで、各カテゴリーにおける指導者・関係者が、改めて何をすべきかを考えさせられる機会になったと思われる。ただ、どのような立場であっても「バレーボールの発展」を願っていると感じられた。
【文責】横矢 勇一(大東文化大学)
基調講演・シンポジウムの詳細は、9月末発刊予定のニュースレター21号を参照ください。