ニュースレター

ニュースレター 第8号

20010905

巻頭言

監事 高橋和之

平成8年5月25日、バレーボールを愛する多数の方々の賛同を得て、第1回バレーボール研究会が早稲田大学体育局で開催されてから、早や6年の歳月が経ちました。平成11年3月、バレーボール学会に名称を変更し、その内容も会員の方々の努力により学会に相応しいものに変貌してきました。

1990年代のバレーボール界は、20世紀最後の激動の10年間だったような気がします。一つにはルール改正が頻繁に行われたこと。それも我々バレーボールを指導する者が仰天するような内容が次々に改正され、戸惑ったのは私一人だけではなかったと思います。ウイリアム・G・モーガン氏が「老若男女誰でもが手軽に、そして相手と身体の接触がなく安全にできるスポーツはないだろうか」という発想から、1895 年にバレーボールを誕生させたと伝えられています。バレーボール生誕100年祭も滞りなく行われ、世界のメジャースポーツの地位を固めつつ、現在地球5大陸すべての地域で行われているであろうこのバレーボールは10年後、そして20年後は一体どのような姿になっているのだろうか、と一抹の不安を覚える今日この頃です。バレーボールを考案したモーガン氏は、「ボールを手で扱いネットを境にして相手コートに侵入することなく対等に戦う」ことをモットーにしておられたのではないでしょうか。

当時ネット下のセンターラインがあったかどうかは判りませんが、少なくともオーバーネットといわれるプレーは反則行為として扱われたに違いありません。(ブロッキングのオーバーネットが許されるようになったのは昭和39年の東京オリンッピック後) モーガン氏の意に反する第一弾は、相手コートに侵入してはいけないことがブロッキング動作のみではあるが許されるようになったことです。私のような小柄なプレーヤーにはとても理不尽なルール改正であったと鮮明に記憶しています。そしてこの10年間次々にルールが改正されました。とても大きな第二弾。それは「身体のどの個所をつかってプレーしてもよい」というルール改正で、モーガン氏の「バレーボールは手や腕でボールを扱うスポーツ」というイメージを根底から覆すことになってしまいました。

我々指導者は「バレーボールという競技はバスケットボールともサッカーやラグビー、ハンドボールとも全く違うスポーツだ」という自負心を持って指導に当たってきましたが、90年代後半のルール改正には、バレーボール本来の姿が徐々に見失われてしまったような気がしてなりません。

科学的研究が技術や戦術に貢献していることは万人が認めるところですが、バレーボール発展のために、もう一度原点に戻ってルールを考えることも大切な気が致します。

1. 収入の部

項目 金額 摘要
予算額 決算額
会費 600,000 1,346,000 @3,000円×延べ448名 その他1名2000円
大会参加費 280,000 358,000 第1回研究集会12名:12,000円
第2回研究集会9名:9,000円
第5回研究大会:5000円×13名=65000円
4000円×68名=272000円
広告費 0 350,000 機関誌掲載広告料4件
繰越金 871,890 1,261,416 1999年度より繰り越し
雑収入 0 50,236 預金利息、大会展示料1件
合計 1,183,619 3,365,652  

2. 支出の部

項目 金額 摘要
予算額 決算額
会議費 100,000 10,073 幹事会・委員会
事務費 50,000 43,446 事務用品、会費銀行振替関連経費、振込手数料等
通信費 250,000 184,810 郵送費187,210円・宅急便費2,560円
大会費 550,000 488,638 第1回研究集会 : 98,335円
第2回研究集会 : 59,985円
第6回研究大会 : 330,318円
印刷費 100,000 54,600 ニュースレター
機関誌発行費 650,000 508,830 機関誌第2巻第1号 
調査研究費 50,000 0  
予備費 1,890 40,000 会長出張旅費 
小計 1,335,357  
次年度繰越金 0 2,030,295 3,365,652円 - 1,335,357円
合計 1,751,890 3,365,652  

以上御報告申し上げます。

 

2001年7月7日
バレーボール学会
総務委員会
委員長 遠藤俊郎 印略

監査の結果、以上の報告に相違ないことを御報告いたします。

2001年7月7日
バレーボール学会
監事 原田智 印略
高橋和之 印略 2001年度収支予算

1. 収入の部

項目 金額 摘要
会費 600,000 @3,000円×200名(概数)
大会参加費 300,000 研究集会:@1,000円×20名(参加者概数)
研究大会:@4,000円×70名(参加者概数)
広告費 200,000 機関誌掲載広告料
繰越金 2,030,295 2000年度より繰り越し
雑収入 10,000 預金利息、大会展示料等 
合計 3,140,295  

2. 支出の部

項目 金額 摘要
会議費 150,000 諸会議
事務費 150,000 会費銀行振替関連経費、振込手数料、事務用品等
通信費 300,000 郵送費
大会費 700,000 研究大会、研究集会等の開催経費
印刷費 200,000 ニュースレター1回、学会封筒、資料等の印刷
機関誌発行費 700,000 「バレーボール研究3巻1号」発行
委員会経費 300,000 100,000円×3委員会(編集・企画・総務) 
調査研究費 200,000  
予備費 440,295  
次年度繰越金 0  
合計 3,140,295  

「2001年度 第1回バレーボール学会研究集会報告」

企画委員 瀧聞久俊

1.はじめに

2001年度第1回研究集会が平成13年7月7日(土)13:30より早稲田大学喜久井町キヤンパス(体育局講義室)で行われた。今回は「これからのバレーボールを考える(現場からの提言)」をテーマとしてシンポジウムが行われた。会場がほぼ満席になる状態で、現場での貴重な経験に基づくシンポジウムが活気に満ちて行われた。その概要を報告する。

2.研究集会プログラム

  1. 開会の挨拶:杤堀申二 会長
  2. シンポジウム 司会:篠村朋樹 氏
  3. 「私の実践報告書--勝つためのチームづくりの理論と実践--」
    壬生義文 氏(岡谷工業高校監督)
  4. 「大型女子選手の育成方法について」
    広紀江 氏(学習院大学)
  5. 「バレーボールとメンタルトレーニングの実践」
    遠藤俊郎 氏(山梨大学、スポーツメンタルトレーニング指導士)
  6. 閉会の挨拶:矢島 忠明 幹事長

3.シンポジウムの概要

1.「私の実践報告書 --勝つためのチームづくりの理論と実践--」

壬生義文 氏

中学から高校に進学するにあたって、強いチームでバレーボールを続けるためには下宿をすることが必要であったが、それができなかった。このことが、現在自宅を合宿所として開放し、15名の部員と生活している背景になっている。高校卒業後、順天堂大学に進みバレーボール部に所属するが、大学時代はプレーヤーとしては無理ではないかと考え、指導者としての勉強に4年間を費やした。高校の教員になり、最初の赴任先で教員は教えるだけではなく、生徒から教えてもらい、それをまた次の世代に伝えていくのが仕事であることを学んだ。それが今日の私のバレーを教えることの原点になっている。岡谷工業高校は特別な推薦制度などなく普通の高校であるが、そういった限られた条件の高校でも優勝できることを示したかった。本校赴任後、最初から成功したわけではなく、失敗期(3年)、成長期(5年):全国1回戦レベル、変革期(5年):全国ベスト8、成熟期(5年);全国ベスト4を経てようやく初優勝にたどり着き、さらに連覇できたことによって選手も自分も自信ができた。情熱だけでは今の生徒は勝てない。「情熱・熱意→チーム・選手への愛情→研究・工夫・実践・徹底→進歩・向上・勝利・優勝→感動・喜び・反省・改善→人間的成長・次への意欲」という勝利を生むサイクルをチーム作りの基本概念としている。具体的な指導法としては、特に人づくりに細かく気を配り、サポーターシステムを導入することによって、ベンチに入れない選手のやる気も欠かない様に工夫している。また、チームマネージメントにおいても細かく考え工夫を凝らしている。

最後に、指導実践から導かれたバレーボールの4つの特性として、①一発逆転のないゲーム②確率のスポーツ③対応力が必要なスポーツ④経験のスポーツとまとめられたことが印象に残った。なお、壬生氏のこの貴重な実践報告の詳細については、来春発刊される機関誌第4巻に掲載予定である。

2.「大型女子選手の育成方法について」

広紀江 氏

宮下(1986)は年齢に応じたスポーツに必要な諸能力の発達に関して以下のように示している。11歳以下では色々な動作に挑戦し脳・神経が発達して、スマートな身のこなしを獲得する。12〜14歳では、軽い負荷で持続的な運動を実践し、呼吸・循環器系が発達し、スマートな動作を長続きさせる能力を身につける。15〜18歳では負荷を増大させ、筋・骨格系が発達し、スマートな動作を長続きさせるとともに、力強さを身につける。19歳以上でスポーツに関わる身体動作を十分に発達させたうえに、試合のかけひきを身につけ、最高の能力を発揮するようにする。私自身の選手生活を振り返ってみると、これに当てはまっていたように感じる。オリンピック参加選手の年齢について東京大会での資料では、女子選手は平均年齢が22.8歳で、トレーニング期間は8.7年、トレーニング開始年齢は14.1歳であった。表1が示すように、女子の優秀チームの平均年齢は他のチームの年齢よりも明らかに高いという特徴があった。

また、図1のように女子チームの身長の変化をみると、決して最も高いチームが優勝しているわけではない。2001年度全日本女子チーム22名の平均身長は176.9cmで、リベロ2名を除くと177.9cmで、更にセッター3名を除くと180.3cmである。世界で勝つことができないのは、身長だけの問題でないように思われる。

(テキスト版につき、図、表は省略)

3.「バレーボールとメンタルトレーニングの実践」

遠藤俊郎 氏

スポーツメンタルトレーニング指導士とは、スポーツ選手や指導者を対象に競技力向上のための心理学的スキルを中心とした指導や相談等を行う専門家であり、日本スポーツ心理学会がスポーツ心理学について一定の学識と技能を有する学会員に称号を付与しその資格を認定している。メンタルトレーニングは選手が自己の心理面を効率的に管理し、コントロールし、自己の最高能力を試合などの場面で発揮できるように心理的諸技術を高めていくトレーニングである。ベテランといわれる一流選手の中には、心理的な技術・テクニックを経験的に身につけ必要に応じて用いる場合がある。

しかし、若手と呼ばれる選手には心理的にも経験が不足しており、よりメンタルトレーニングが必要である。競技レベルが高いほど、さらに、実力が接近しているほど、心理面のコントロールの良否が勝敗を左右する場合がある。メンタルトレーニングによるプラスの効果、もしくは効果が見えない場合はあるが、マイナスの効果はほとんどないと考えて良い。選手は自己の心理面において自分自身に責任を持ち、個人の自己評価を高めることが進歩のポイントである。成功するために必要な心理的技術は学習することができ、心理的技術は体系的なトレーニングによって高められる。全日本男子バレーボールチームでは、現在、啓発活動・談話、ワンポイントアドバイスを作成し選手に配布するとともに心理的技術の指導を行っている。心理的アセスメントにおいては質問紙などでチェックするとともに、個人面談やメール等も活用し、問題解決や心理的技術の指導に役立てている。また、動機づけをおこなうために練習日誌を活用することによって心身の自己評価を行わせている。

お知らせ

本委員会では、委員会活動の一環としてバレーボールに関する研究文献の収集並びに情報提供を行ってきました。「バレーボール研究」第3巻で報告した通り、過去10年間の収集件数は390件を超え、学会ホームページにもその一部を「文献データ一覧」として掲載し、ご活用いただいています。今後、文献データをできる限り迅速に会員の皆様に提供したいと考えています。よろしくご協力の程お願い致します。

  • 会員の方が大学・研究所や各種学会(特に地方学会)で発表された研究文献や雑誌などに投稿された文献を編集委員会に送付。
  • その都度、学会のホームページに掲載。
  • 2年ごとに報告分をまとめ、印刷物として会員に配布。

この方法を実効性のあるものにするためには、会員の皆様方のご協力が不可欠です。 皆様方の積極的なご協力をお願い申し上げます。

文献の登録項目は次の通りです。

  • 研究年次(西暦、和暦)
  • 論文主題
  • 論文副題(ある場合のみ)
  • キーワード(5語以内)
  • 発表者名(著者名):全員の名前を記載する 
  • 雑誌名
  • 巻数、号、頁数(開始頁および終了頁)
  • 要約(HPで紹介)

別刷りをお送り頂いても結構です。よろしくお願い致します。

送り先は、上記、編集委員会迄郵送かFAXで、または電子メールにて、jsvr-hensyuu@asu.ac.jp宛にお送りください。学会HPからも送ることができます。

編集後記(事務局便りを含めて)

今回のニュースレター巻頭言では、高橋和之監事が、バレーボール考案者W.G.モーガンの創始時の理念に触れながら、1990年代目まぐるしく改変されたルールによってモーガンの意図したバレーボールからかけ離れていき、これまで我々が持っていたバレーボール本来のイメージがドンドン崩れていくことの危惧感を指摘しています。もちろん、バレーボールも時代の要求と共にその姿を変容させていく事は必然的なこととは思われますが、それにしても「バレーボールという競技の本質とは何か?」ということを改めて再考する時期にあることは間違いなさそうです。このような時に、バレーボール学会もヨチヨチ歩きからようやく地に足をつけて学会に相応しい諸事業を展開できるようになってきたということは単なる偶然の一致ということではないかもしれません。これは今後本学会に課せられた一つの研究課題ということができるかもしれません。

様々な立場にある会員の方々が様々な角度からのアイディアを持ち寄り、それを積極的に提示していくことによってこのような様々な研究課題を検討する手がかりを得ることができるものと思われ、そのためにも本ニュースレターでも告知しております研究集会、研究大会、機関誌等を是非有効に活用していただきたいと希望します。また、現在事務局で会費の口座振替に関わるデータの入力作業を進めておりますが、1999年度12月より会費の預金口座振替業務を開始しました。これは、会員の皆様の会費納入の手続きの簡略化と共に学会の収入を確保するという大きなねらいがあります。機会ある毎にお願いはしておりますが、会費の預金口座振替手続きを終了していない会員の皆様には早急に「預金口座振替依頼書」を返送下さいますよう御協力のほど宜しくお願い申し上げます。

さらに、本学会規約第6条で「会員で2カ年会費を納入しない者は退会したものと見なす」と規定されております。現在会費が未納の会員には年に1回未納年度と金額を通知して納入をお願いしており、この規定を厳密には適用してはいません。しかし、郵送費等の出費も増大しており、今後は第6条を厳密に適用せざるを得ない状況が役員会でも検討されております。

つきましては、未納会費がある会員の皆様には早急に会費の預金口座振替手続きをお取り頂くと共に未納金額を納入下さいますようお願い申し上げます。

(2001.9.5.Toshi.)

ニュースレター < ジャーナル

2001年09月05日 00:02:10