ニュースレター

ニュースレター 第6号

19990201

巻頭言

監事 原田智

昭和35年(1960年)、関東大学秋季リーグ戦で初めて6人制バレーボールが取り入れられた。 この年は、春季リーグは9人制、秋季リーグは6人制・9人制併用でと、賛否両論の中、 試行錯誤の状態でリーグ戦が開催されていた。 昭和39年(1964年)、東京オリンピックの開催が決定し、6人制バレーボール競技が正式種目として採用されてから、 各団体の取り組みも一変し、関東大学連盟も昭和36年、秋期リーグ戦から正式に6人制が採用されスタートした。 サーブ権のあるチームだけが得点可能という慣れない競技方法に、多くのチームが、 審判員たちが戸惑いを感じながらのゲーム運営に四苦八苦させられたことを思い出す。 あれから40年弱が経過し、全てのセットの得点方法が、9人制時代のラリーポイント制に変わり、 大学連盟も今年度春季リーグ戦から1セット25点制で開催することになった。 9人制から6人制に変わったあの混乱した時代と異なり、今回の改正は大した抵抗感もなく、 あっけないルール改正のようにもとられた。 取り分け54、5才以上の人たちにとっては、懐かしいバレーボール競技の復活と見ているのではなかろうか?

しかし、目まぐるしく変わるルール改正は、日本にとっては致命的なルールへと変わっていった。東京オリンピック以来、日本チームの活躍は男女とも目を見張るものがあり、コンビバレー、つなぎのバレー、守りのバレーと、確実に世界をリードしアピールしてきた。しかし、メキシコ・ミュンヘン・モントリオールを境に、日本の下降線が始まっていった。その大きな理由がルール改正であり、ロシア(当時はソ連)、ヨーロッパを中心とした各国が、日本バレーの封じ込み作戦に荷担し、次々とルール改正が採択されていき、彼らの思惑通り今や日本バレーは完全に打ちのめされてしまった。

度重なるルール改正と並行し、日本に不景気の波が各企業に押し寄せ、廃部・休部が続出し、また、教育界にも、少子化傾向と共に中・高校では部員不足に拍車がかかり、休部を余儀なくされていく学校が増加し、また、若者が段々バレーボールから遠ざかり、まさに日本のバレー界は崩壊寸前にある。加えて、多くの大学が、体育をカリキュラムから外したり、選択科目にしたため、運動嫌いの学生たちにとってはこれ幸いとなり、体育の受講生が激減している。そのため、体育指導者の採用が控えられてしまい、優秀な若き大学院卒業生の勤務地が奪われ、これから日本のスポーツ界をリードすべき指導者、研究者たちがその"行き場"を失いつつある。これはスポーツ界全体にとって大きなマイナス要因となっている。もう既に世界はおろか、アジアにおいても、中国、韓国に一歩も二歩も遅れを呈してしまっている。

しかし、悲観的なことばかりではない。指導者・研究者の不足、部員不足の悩みにいち早く対処すべく、日本最高の頭脳を集めて対処していくべく発足したのが、このバレーボール学会である。今日の惨状を救えるのはこの会の全国の会員たちである。企業・指導者が一体となりこの難関を突破しよう。会員諸子の益々の健闘を祈ってやまない。

1999年度 第1回バレーボール学会研究集会報告

企画委員 小川宏

1.はじめに

1999年度第1回バレーボール研究集会が、平成11年7月 17日(土)14時30分より、筑波大学付属高等学校体育館アリーナ及び体育講義室で行われた。今回のテーマは「ソフトバレーボールの小学校での実践研究」であった。今回の研究集会に参加した立場から、その概要を報告したい。

2.研究集会プログラム

  1. 会長挨拶
  2. 「教科体育にソフトバレーボールを採用した経過および背景」 永島惇正 (東京学芸大学教授)
  3. 「ソフトバレーボールにおけるゲームの実践指導法」 浜崎順子 (京都教育大学付属桃山小学校教諭) (実技モデル:目黒区立東山小学校児童)
  4. 「ソフトバレーボールのゲームおよびディスカッション」 浜崎順子
司会,企画委員
福原祐三、篠村朋樹

3.研究集会概要

はじめに、栃堀申二会長からあいさつがあり、その中で日本のバレーボール導入時期から近年のソフトバレーボール普及までの概略説明があった後、永島氏発表によるシンポジウムに移った。永島氏は、小学校学習指導要領等にバレーボールが採用されてきた歴史的経過を踏まえながら、平成10年の小学校学習指導要領に「ソフトバレーボール」が採用された経緯についての説明があった。また「バレーボールの教材化」という場合に2つの見解があること、すなわち、小学校教材にバレーボールを取り入れてもらうというバレーボール協会側からの見方と、小学校教材としてふさわしいようにバレーボールを作り変えるという教科教育的な見方があることについて述べた。さらに、ゲームにこそ多くの学びの内容が含まれると考えられるため、ゲームがすぐに出来るようでなければならないことを強調した。

続いて体育館アリーナに移動し、浜崎氏の実践指導法に移った。目黒区立東山小学校児童24名に対して50分程の公開授業。講師紹介の後、ソフトバレーボールは初めてという児童を前に浜崎氏は、心を通い合わせることの大切さについて話をし、そのためにチームで声をかけ合うこと、また、自分たちで主体的に学習するために記録用紙に記入させること、挨拶をきちんとすること等について話した後、4人1組のチーム別活動、そして簡単なルール説明をしてゲームへと授業は進んでいった。ゲームでは最初100グラムのボールを使用していたが、初めてということもあってなかなかラリーが続かず、サーブミスも多いゲーム状況が見られた。と、すかさず浜崎氏はボールを50グラムのものに変え、サーブは入るまで何回でもOKにルール変更、ボールの受け方についてのアドバイスも付け加えた。すると次第にラリーが続くようになり、後半のゲームでは3段攻撃に近い形も見られるようになった。授業終了後には子供たちから、「もっとやりたーい!」という声が体育館に響き、その後の参加者によるゲームは予定を変更して子供たちと一緒に行うことになった。

最後に篠村氏司会によるディスカッションが行われた。フロアからの質問に浜崎・永島両氏が答える形で進められた。主な質問とコメントは以下の通り。

Q.ゲームと基本との関連についてどのように考えるか?
A.あくまでもゲームを中心とし、ゲームをしていく中で自然に技術の向上意欲を自ら持つようになると考える。
Q.ひざ当てはやはり付けた方がいいか?
A.滑り込んでボールを取るようになる、またそういう気持ちになる等の効果があり、実際にも付けない時とはラリーの続き方が全然違うようだ。
Q.一般に普及しているゴム製のソフトバレーボールと比較して今回の軽いボールは授業教材としてどうか?
A.従来のゴム製のソフトバレーボールでは小学生には難しすぎて授業教材としては困難である。単元6〜10時間でバレーボールの楽しさを教えるためには軽くて扱いやすいボールから始める方が好ましい。基本的なボール扱いに時間をとられない分だけ戦術にすぐ入っていける。

4.おわりに

今回の参加者は40名程度であったが、シンポジウムあり、公開授業あり、ゲーム体験ありで非常に充実した内容であった。ソフトバレーボールの用具も各メーカーから発売されている様々な材質、大きさ、重さのボールやネット等が数多く展示され、今までのソフトバレーボールについてのイメージを大きく変えさせられた参加者も多かったのではないかと思う。これら様々な種類のボールや多様なルールでプレイヤーのレベルや特性、嗜好に合わせて柔軟に展開されるソフトバレーボールは、上から一方的に決められ(あるいは変更され)たルールの下で厳密に行われ、競技人口減少の途にある現在の6人制バレーボールとは極めて好対照な存在であると強く感じた今回の研究集会であった。

1998年度収支決算報告

1.収入の部

項目 金額 摘要
予算額 決算額
会費 450,000 678,000 @3,000円×延べ226名
大会参加費 300,000 424,100 第4回総会・研究大会延べ107名
繰越金 433,619 433,619 1997年度より繰り越し
雑収入 0 52,000 雑収入、展示料
合計 1,183,619 1,587,719  

2.支出の部

項目 金額 摘要
予算額 決算額
会議費 100,000 42,168 幹事会等諸会議
事務費 30,000 3,759 事務用品
通信費 100,000 103,560 郵送費
大会費 450,000 471,712 第1回研究集会:78,100円
第2回研究集会:74,720円
第4回総会・研究大会:318,892円
印刷費 100,000 94,630 研究会封筒、ニュースレター
機関誌発行費 350,000 0  
調査研究費 50,000 0  
予備費 3,619 0  
合計 1,183,619 715,829  
差し引き残額
1,587,719円-715,829円=871,890円
(1999年度に繰り越し)

以上御報告申し上げます。

 

1999年7月17日
バレーボール学会
総務委員会
委員長 遠藤俊郎 印略

監査の結果、以上の報告に相違ないことを御報告いたします。

1999年7月17日
バレーボール学会
監事 原田智 印略
高橋和之 印略

1999年度収支予算

1.収入の部

項目 金額 摘要
会費 600,000 @3,000円×200名(概数)
大会参加費 280,000 @4,000円×70名(参加者概数)
繰越金 871,890 1998年度より繰り越し
雑収入 0  
合計 1,751,890  

2.支出の部

項目 金額 摘要
会議費 100,000 幹事会等諸会議
事務費 50,000 事務用品
通信費 250,000 郵送費
大会費 550,000 研究大会、研究集会等の開催経費
印刷費 100,000 ニュースレター1回、資料等の印刷
機関誌発行費 650,000 「バレーボール研究2巻」発酵
調査研究費 50,000  
予備費 1,890  
合計 1,751,890  

編集後記(事務局便りを含めて)

 

今回のニュースレターには、第1回研究集会報告、第1回幹事会(7/17)で承認された1998年度会計報告、及び、それに基づく1999年度収支予算書、等の報告事項に加え、相部・米沢両企画委員を中心に企画した九州の地で開催する第2回研究集会案内、また、本年度の特別企画的意味合いの濃い第3回研究集会案内、また、第5回総会・研究大会要項、抄録執筆要項、さらには、機関誌2巻の原稿募集案内、等の告知事項を掲載いたしました。巻頭言では原田監事がルール改正に関連させて今日のバレーボール界の置かれた状況の厳しさを鋭く指摘され、バレーボール学会の果たすべき役割の一端を再確認させられた思いがしました。会員の方々がそれぞれの立場でさまざまな考えを積極的に提示していくことが原田監事から求められていることと思われ、本ニュースレターでも告知しております研究集会、研究大会、機関誌等を是非有効に活用していただきたいと希望します。

 

また、現在事務局で会費の口座振替に関わるデータの入力作業を進めておりますが、本年12月より会費の預金口座振替業務を開始したいと計画中です。しかし、現在まで27%の会員の方々にしか 「預金口座振替依頼書」を返送していただいておりません。ニュースレター本文にもありますが、本年度の予算執行にも支障をきたしますので早急に返送下さいますよう御協力のほど宜しくお願い申し上げます。今回は、「最新の出版情報」欄を掲載することができませんでした。会員の方々の出版物等に関する情報提供をお待ちしております。遠慮なく事務局までお寄せ下さい。

(1999.2.Toshi.)

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1999年02月01日 00:01:21